ブックタイトルkamaboko_all
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町についたぼくは、海のみえる小さな製材所でくる日もくる日も日なたぼっこをしながら、あこがれの海をながめ山のように大きな魚を待つ日がつづいたんだ。でもね、水を天にふく大きな魚には会えなくてぼくは少したいくつだなって感じはじめていた。夜になってもなかなか眠れなくて、月に光る海をながめていると遠くから、ぼくを呼ぶおかあさんの声がしたんだ。それは、とっても小さくて、すぐ波の音に消されたけど、まちがいなく・・・・・やさしくて、あたたかいおかあさんの声だった。何だか急にさみしくなったぼくは、その夜、山を出てはじめて声をあげて泣いたんだ。そんなある日、ぼくのからだがふわっと浮いたんだ。「キューン」「キューン」と音がして、ぼくは、うすっぺらな板になっちゃた。翌朝早く、しわしわのおじさんがぼくをギュッとにぎったかと思うと、くるくるとまわしあれよあれよで「いっちょあがり」ぼくはその間、ずっとどきどきしてたんだ。だって、まちにまった「かまぼこ板」になっちゃったんだもの。ぼくとかまぼこは、きれいな箱に入り旅をすることになった。いくつものトラックターミナルを乗り継いで街の中を走っている旅の途中かまぼこがぼくに話しかけた。「ぼくらは、たべられるのが仕事なんだでも君はすてられるんだよね」かまぼこの言ってることがよくわからなくて「えっ」と聞きなおした。「あのね、ぼくらはいっしょにいる間はかまぼこなんだ」「でも、君は板だから食べられないだろうだからぼくとはなれたら、すてられちゃうんだよわかったかい・・・・!?」「ああ、そうかぼくはかまぼこじゃなくてかまぼこの板なんだ・・」海にあこがれ、山をおりたことを少しずつ後悔しはじめたんだ。でも・・・でも・・・ぼく、すてられたくないよう・・・!その時トラックは、大きな家の前で止まった。「ピンポーン」の音とともに「ハーイ」とやさしそうなおかあさんの声。とうとうぼくの旅も終わりをむかえたらしい。117