ブックタイトルkamaboko_all
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夕方になると家の人が次々と帰ってきて、ぼくらを、のぞきこんでは「おいしそうー」「えーどなたからの贈り物―?」といっては立ち去った。それからしばらくしておかあさんが台所に立ち、食事の準備をはじめた。「ああー、いよいよだな」とぼくは覚悟を決めた。「さようなら、おとうさん、おかあさん」「さようなら、ぼくのふるさと」「さようなら・・・・・」だんだん気が遠くなっていくのを感じながらぼくは目をつむった。その時、小さな女の子の声がかすかに聞こえた。「ねぇ、おかあさん、この板わたしにちょうだい」「じつはね、かまぼこ板の絵展覧会というのがあるの」「絵は、だれが、いつかいてもいいでしょ何にかいてもいいよね!」「それなら、すてられちゃうかまぼこ板を使ってみようって思いついたんだって」「ねぇ、おかあさんもかいてみない?」ぼくは、その女の子の話を聞いているうちにありがとう!ありがとう!ありがとう!なんだか、からだのずっと奥の方から力が湧いてくるのを感じたんだ。消えかけていたこころの音が「ドックン」「ドックン」よみがえってきた。それは、ぼくの真ん中で大きくふくらんで女の子のメッセージと一つになりはじめたんだ。「ああ、もう一つのぼくの人生がはじまる。」うれしくて胸がいっぱいになった。ぼくは、だまっていられなかった。おめでとう!!「ありがとう」「ありがとう」「ありがとう」ぼくの新しい人生にぼくからも「おめでとう」118