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概要

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65ウナギやカジカ(ヨシノボリ)、ドンコなどが顔を並べ、アシの根元や水草の下にはオタマジャクシやヌマエビ、ミズカマキリなどが棲すみ、初夏になるとその中を割ってコイやフナ、ナマズたちが産卵にやってきていたはずです。そういった生きものたちの営みが微妙に働きあい、「川」という生物生存の環境がつくられ、持続していたのです。ところが戦後、この国の川の多くは、洪水対応型の三方張水路(両護岸と河床の三面をコンクリートで覆おおった水路)にしたため、水の流れが速くなり、ゴミやヘドロは淀よどむことなく下流へ流され、一見衛生的とも思える姿に変わりました。しかし、これでは自然界の微妙な調和までは解決できません。コンクリートや鉄は、太陽熱を吸収し、放熱します。しかし、水は放熱するときに気化熱を奪い、まわりの温度を一定に保とうとする特性があるので、自ずとそこに暮らす生きものにとって住みやすい環境を用意してくれるのです。とくに河床は、一度破壊してしまうと、現在の技術力で再生するには、長い時間と手間がかかります。そこで建設デザイン課は、河床を破壊しないで山の斜面を削り、その山際に道路を施す「通水断面三割アップの発想」をはじめ、石組み護岸や瀬・淵・ガマを連続して配すなど、自然河床に近付ける川づくりに努めています。また、現在施行される堰せきは、コンクリートところが、その一方で川に暮らす生きものたちの生活環境を著しくうばってしまったことも否めません。アユやウナギからハゼの仲間たちまで、川の一部の魚は、産卵のため海へ下り、再び川をのぼります。種の存続にかかわる生命の旅を、このコンクリートの壁が阻止してしまうのです。一部の堰には、「魚道」という魚が乗り越えるための水路も施されていますが、果たしてどれほど魚の役に立っているのか、疑問です。無理のない水の流れを、最大限に生かす河床構造。効率の良い取水機能を備えつつ、魚も喜んで往来する堰の姿。その完全なる答えを得るためには、まだまだ時間が必要です。しかし私たちにできる努力を一つひとつ積み重ね、新たな世代へと引き継いでいかなければならないと思います。ECOLOGY TOWN UCHIKO石畳小学校前を流れる麓川に施された堰機能と河底機能を複合した人工河床。子どもたちにとっては、水棲昆虫観察の場となっている。麓川に施された柴しばがみぜき神堰では、川をのぼる魚が推進力を得るため、あるいは休むためのプールも設計。従来の河川改修例と急流河川の改修例通水断面3割アップの発想図概略、河床保全の概念一般的な開発通水断面三割アップの発想従来の河川改修急流河川の改修例通水断面100%通水断面100%HWLHWLHWLHWLLWLLWL底張コンクリートコンクリートブロックまたはよう壁道路河川改修定規断面100%河川改修定規断面130%河床の形態を変えない降雨が大地へ浸透することができない降雨通路コンクリート舗装道路アスファルト舗装降雨は大地へ浸透し、飽和状態となれば河川へ流入する河辺林(ネコヤナギ、キシツツジなど)(セキショウなど)岩隙草木植物群土砂流失防止ネット栗石など岩組渓谷林または河畔林急流河川で岩組が安定しない場合、最小限の胴込コンクリートの使用はやむをえない。河床は瀬、淵、ガマを連続して配し自然河床に近づける。河床が岩盤の場合もしかりである。降雨