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概要

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67大瀬地区の水道水は、もともと地区の中心地を流れる小田川に依存していました。ところが、洪水になれば川全体が赤銅色に濁ります。夏場の渇水期には、川底が薄茶色に塗り替えられたように、藻が繁殖してしまいます。そこで、1988年ごろから、地元簡易水道の役員さんたちが「陣ヶ森から染み出す沢の水を水道水にできないものか?」と真剣な議論を始めたといいます。もともと陣ヶ森は、マツタケのよく生える豊かな松林が広がっていました。しかし、1980年ごろからはじまった松くい虫の被害で、樹木は枯れてゆきました。豊かな沢水を得るには、豊かな森林が必要です。そのためには枯渇した緑を回復させなければなりません。ところがこの山の斜面は、急峻な上、地力もないことから、スギやヒノキなど、建材として出荷できる樹種には、不適当でした。そこで愛媛県が取り組んでいる「水源涵養保安林」制度を導入し、森づくりを始めたのです。この制度は、一定の税制上の優遇措置と森の再生に向けた植林や、保護育成に対して助成が期待されています。このほか、山地開発や乱伐に対しては、規制が加えられ、永続的な森づくりには、最適な制度だった美味しい水を育むためにのです。保水のできる森づくりは、広大な面積が必要です。そこには多くの土地所有者がおられます。そこで水道組合の役員さんたちが中心になって、地元住民や関係する地主さんたちを対象とした説明会を開きました。承諾をとってまわった結果、制度を導入することができ、本格的に森林回復事業に着手。1995年から、陣ヶ森の沢水を集めた簡易水道が、大瀬の集落に届けられました。蛇口からは、いつもかわらぬ美味しい水がほとばしります。現在、水源の沢は2ケ所ですが、2003年にはさらに1ケ所増え、より多くの水が住民を潤します。水もまた人の手で守り、育むもの。住民の決断と努力が、かけがえのない「普段の幸せ」を創り出し、その心映え(精神)は、次世代へと受け継がれていきます。ECOLOGY TOWN UCHIKO陣ケ森に見守られ、中央に小田川の流れる大瀬の集落